春も嵐も

やっぱり、寂しそうだった。

周りはカップルや家族連れでこんなにもにぎやかだけど、弥生の顔はそれとは無縁である。

どうしてやりゃいいんだよ…と思っていたら、俺の視界にとある出店が入った。

「ちょっと待ってて」

首を傾げる弥生を待たせると、俺は小走りでそこへと向かった。

「お待たせ」

それを片手に、俺は再び弥生の前に現れた。

「何それ?」

不思議そうに目を丸くする弥生に、
「わたあめじゃん」
と、俺は言った。

入道雲を連想させるようなデカいわたあめが俺の手にあった。

「食うか?」

俺はそう言って、弥生の前にそれを差し出した。