春も嵐も

突然大声を出した俺に、不思議そうな顔で美波さんと杉里さんが視線を向けてきた。

弥生は落ち着いてた様子で、
「どうしたの?」
と、俺に聞いた。

「財布を落としたらしい…」

呟いているような小さな声で俺は言った。

「えっ、大丈夫ですか?」
と、心配そうに杉里さんが聞いてきた。

「ちょっと、探してくるわ!

先に行ってて!」

「じゃあ、あたしも行く!」

弥生がそう言った瞬間、美波さんは怪訝な顔をした。

「ちょっと、弥生…」

「なるべく早く戻ってくるから、先に行ってて!」

弥生が先を言わせないと言うように早口で言うと、俺と一緒に走ってその場を去った。