春も嵐も

歩いて行くと、だんだんとお囃子の音が近づいてきた。

焼きそばのいい匂いも少しずつだけど近い。

よし、焼きそばを食べるぞ!

そんなことを思っていたら、
「杉里さーん!」

美波さんが大きく手を振ったので、俺は視線を向けた。

『松田堂』の前にいるのは、藍染の柄のない着流し姿の杉里さんだった。

俺たちの姿に気づいた杉里さんがニコッと微笑んで、会釈をしてきた。

「こんばんはー」

杉里さんの前にくると、美波さんはあいさつをした。

「ああっ!」

その瞬間、俺は大声を出した。