春も嵐も

「嵐くんはどう思う?」

美波さんに聞かれたので、俺はそっちの方に視線を向けた。

「いいんじゃね?」

美波さんの手に持っている浴衣をろくに見ないで、俺は適当に答えた。

「ほら、嵐くんだって言ってるんだから…」

視線をもう1度月の方に向けた。

言えないな、杉里さんが弥生じゃなくて美波さんに片思いしてるだなんて。

「嵐?」

振り返ると、そこにいたのは弥生だった。

「美波さんは?」

「さっき帰った」

「そう」

返事をしたら、弥生が物干し場にきた。

当たり前のように俺の隣に弥生が座った。

「何かあったの?」

弥生が聞いてきた。