「ついた」

わずかな荷物を片手に、俺は電車を降りた。

「デカい街だなー」

さすがは都会だ。

あちこちに建てられている高層ビルは、田舎育ちの俺には刺激が強過ぎる光景だ。

「とりあえず、間違いない」

俺がこの街にきた理由――それは、ある人物を探すためである。

この街に住んでいるのが、何よりの証拠だ。

「絶対に見つけてやるからな」

俺は口の中でそう呟くと、深くかぶっていた黒のキャップをあげた。

それまで狭かった視界が広くなった。

シャツの下にあるそれを、シャツの上からグッと手でつかんだ。

「待ってろよ、親父…」