―放課後。

「フフフ…」

毎度お馴染みの笑い声を発しながら、紙田は双眼鏡で佐藤を監察していた。

今から、作戦を実行するからだ

「…上手くやれよ。佐藤」


一方佐藤は、特に緊張をせずに、一人で下校している上野に近づく

―出だしが肝心だよな。これ

「あ、あの、上野くんだよね?」

普段とは違う、猫を被っている声で上野に話しかける
上野は佐藤の方を見て

「うん、そうだけど…」

怪訝な顔で佐藤を見る

「上野くん、テニス部だよね?」

「そうだけど」

「俺、テニス部に好きな奴がいるんだけどさ、協力してくれない?」

と、前回学んだことを無視し、何とか上野に近づこうとする佐藤。

「テニス部って…男子だけだよね…?」

―しまった!!

―今から…ソフトテニスと言い直すか…。いやだったら上野くんと関係ないし

「ははーん」

上野は何か納得したようだった。

「顧問の橘先生だろ?」

橘先生とは、若い、女の先生だった

「そうだよ…ハハハ」

「わかった。でもあの先生、めちゃくちゃ怖いぞ?」

「そこがいいんだ!!」

「…M?俺が何とか仲取り持ってやるから。佐藤くんもがんばれよ」

「ありがとう」

―よかった。めちゃくちゃいい人で

それが上野の第一印象だった