佐藤は紙田の携帯に電話をかける
プルルル…
プルルル…
プルルル…
只今、電話に―…
出ない。
佐藤は病院に行ってみた。
―自分の勘違いでありますように…!!
真菜の病室を看護師に聞き、慌てて向かう
紙田が、真菜の病室の前のソファに座っていた。
「先輩!!」
「……」
無言のまま、紙田は佐藤の顔を見た。
普段は見せない、驚くほど無表情だった。
「先…輩…?」
佐藤は病室の中を見た。
ドアが開いていたのでよく見えた
真菜の家族と思われる人。看護師、医者が、真菜の周りを囲んでいた。
医者に続き、看護師も病室から出ていった。
やっと真菜の姿が佐藤は見えた。
ベッドの上には、真菜という器があっただけだった。
「……んで」
側で、紙田が呟く。
「なんで……今なんだよ…」
拳を握りしめ、足を叩く
「まだ……3日あるじゃねーか…!!!」
「なんで……な…んで…真菜なんだよ…」
「諦めなかったら……諦めなかったら……願いは叶うんじゃねーのかよ……」
紙田の声は静かに病院で響き、そして溶け込んでいった。
※
それから何日後
真菜の葬式が行われた。
紙田は時間より早く来ていた。
誰もいない部屋。紙田と真菜しかいない。
「真菜…聞こえてるか?」
「……」
「ちょっと…後悔したんだ、俺」
「……」
「デート、いや、散歩。ちゃんと自分ですればよかったって」
「……」
「だって、俺ならもっと楽しませることができたのに…」
「……」
「油断した。また会えると思ったから。またデートできると思ったから」
「……」
「好きだよ。真菜」
「……」
「もしかしたら、他に好きな奴ができるかもしれない、でも、お前のことは一生忘れない」
「……」
「そして、俺は無心論者だから、輪廻なんて信じねーけど」
「……」
「俺は都合がいい人間だ。だから、」
「……」
「生まれ変わったら、また会おう」
「……」
「そして、今度はいっぱいいっぱい話、いっぱいいっぱい喧嘩し、いっぱいいっぱいデートしよう」
「……」


