成熟と化して


なんとか一命をとりとめた真菜の病室に、家族と思われる人、三人が、安堵した顔つきで真菜のベッドの側にいた。
その中の一人が、病室の外に座っている紙田に近づいて来た

「あなたが、紙田くん?」

「はい」

「いつもありがとう。真菜、最近あなたのことばかり話てるの」

「…そうですか」

紙田は自嘲気味に笑い

―俺なんか……あいつの何の役にも立ってないのにね

「あなたのおかげであの子はとても毎日が楽しいらしいの」

「……え?…」

「いろいろ気にかけてくれてるのね、本気にありがとう」

「俺なんか…何も…!!」

「そう思わないで。あなたは、あの子にとって今の生き甲斐だと思うの」

「……」

「あの子こと、よろしくね」

―どうすりゃいいんだよ…
俺なんか、何も出来ねーんだよ
好きな子一人だって守れねー弱虫野郎なんだ。
俺なんか…
俺なんか…
俺なんか…


―――…



次の日。
盛り上げ部部室にて

「先輩、次の標的誰にしますか?」

久々の登場の佐藤。
彼は彼なりに、盛り上げ部を楽しんでいるようだ。

と、それはおいとき、紙田はソファで、いかがわしい本を開いてはいるが、頭の中は真菜のことでいっぱいだった。

「せんぱーい?」

「……」

「せんぱーい?」

「……」

「せんぱーい?」

「……」

「先輩!!!」

佐藤が強くいい、ようやく自分が呼ばれていることに気付いた

「な、なんだ?」

いつもの調子でにやついた顔で佐藤の方を向く。

「どんだけ熟読してるんですか」

「ごめんね~」

おどけた口調で言う紙田に呆れた顔をする佐藤だったが、すぐに元の無表情の顔になった。

「で、次の標的はどうするんですか?」

「標的?何の?」