成熟と化して


「もしかしたら、幽霊がいるのかもしれません」

冗談を言ってる雰囲気ではない。そもそも冗談を言える状態でもなかった。

「怖いんです。人がいるときはいいんです。でも……一人になると、あの狭い、殺伐とした環境にいると、急に…急に…」

そこで言葉は途切れた。
真菜が倒れたからだ。
紙田は慌てて看護師を呼びに行き、大事には至らなかった。


次の日

紙田は真菜の病室に行った。
ノックをすると、中からか細い声で「どうぞ」と言う声が聞こえた。

ドアを開くと、寂しそうな顔で、窓を眺めている真菜の姿があった。

「あ、紙田さん。昨日は失礼しました」

紙田の方を向き、微笑を浮かべながら真菜は謝った

「気にしなくていいよ」

そう言ったあと、ベッドの近くにあったイスに座り、

「これ、プレゼント」

紙田の晩作った、小型のロボットを真菜に見せた。機材はどこから調達したのかは内緒だが

「上手いだろ?手作りなんだ」

「はい。とても」

先ほどと変わらない、微笑を浮かべていた。

「俺さ、ロボットとか作るの好きなんだ」

敢えて爆弾は言わなかった紙田。

「簡単なのでいいから、教えてやるよ」

言い方は上から目線だし、真菜が特にロボットに興味を持ってるわけでもなかった。
でも、これは昨日の晩紙田なりに考えた、真菜を一人にさせない方法だった。

「ありがとうございます」

ロボットを見つめながら、真菜は言った。