あれはたしか、佐藤にキレられて、頭に哺乳瓶を叩きつけられたときだったな…


「なぜ叩いた?」

と、その疑問を解くために佐藤が来ることを願がいながら、毎日を過ごしていた。

その日は目がすっきりして、全然眠れなかった夜のこと。

「暇だぁ」

そこまで怪我が酷くないので、医者や看護師がバタバタ来るわけでもない。
学校の時間なので、友達が見舞いに来るわけでもない。
親が来るわけでもない。

「盛り上げ部なのに、俺が一番つまんなさそうにしてるんじゃないか?」

次長気味に言い、紙田は「探検でもするか」と、病室を出ることにした。

―暇つぶしにはなるだろ

「いい機材でも見つかるといいな」

少し探検する目的がおかしいが、紙田の頭には何の違和感もなかった

「下に行こう。下には絶対未知の世界が広がってるはずだ」

夜にも関わらず、大声で叫び、階段を凄い大きな音をたてながら降りていた。

患者にとっては睡眠妨害

いい機材に出会うかと淡い期待を胸に込めながら、ロビーに出た。
「とりあえず、霊安室にでもいこっかな」

「あの…」

か細い女の声が聞こえた。紙田は少しビクッとしたあと、ソファに少女が座っていることに気付いた。

「すみません…驚かしてしまって」

遠慮がちに謝る彼女。
顔はなかなか可愛い。
―あ、俺のタイプかも…

と紙田は軽く下心をもっていることには気づかず、少女はやはり遠慮がちに言う

「霊安室…がどうしたんですか?」

「ああ、今から探検に行くんだ!!暇だし。で、まずは霊安室からってこと」

「なるほど…」

少女は軽く頷き、柔和な笑顔を作った

「あの、私も一緒に行ってもいいですか?」
「え?」

戸惑う紙田に対し、慌てて謝った少女。
紙田もあわててフォローする。