女の人との暮らしは、大して父さんのときとは変わらなかった。
借金こそないが、豊かな暮らしとは程遠い。
だから俺は幼稚園の頃から勉強した。
頭さえよければ、いい大学、いい職場にいけると思った。
「潤くん、少しは休んだら?」
女の人は僕を心配してくれたらしい。
「ううん。もっと頭よくならなきゃいけないから」
そして俺はわざと声を低くして言った。
「…父さんみたいにはなりたくないから」
「……」
女の人は、憐れみか、罪悪感からか、変な目で俺を見てきた。
たぶんこの頃だ。
自分が全く人を信頼してないことに気付いた。


