「俺が彼女にしたいって思うのは…紗智だけなので。」 ドキッと波打つ鼓動が体を火照らせる。 反射的に視線を九条君に向けると、柔らかい笑顔が降ってきた。 「私…なんだか悪い夢でも見てるのかしら…。」 戸惑い気味の声で話す春石先輩はため息を漏らす。 「また放課後にあらためて、綺斗くんに会いに行くわね。」 そう言って、教室を先に出て行こうとする春石先輩を見た途端、九条君は先輩の傍に駆け寄ると、腕をガシッと掴んだ。 「ちょっと待てよ。」