「なに?」 歩く足を止めずに素っ気なく聞くと、九条君は後ろから駆け足で私を追い抜いて、目の前に立った。 私が驚いて足を止めると、九条君は柔らかな笑顔を見せた。 「今日は…ありがとな。おかげで、勉強もはかどった…。」 えっ…… いきなり勉強のお礼なんて言わないでよ…。 しかも笑顔で……。 「わ、私はお礼言われるほどのことしてないってば…。」 「…してるよ。紗智じゃなきゃ、俺は…あんなに勉強に対してやる気も出ないからさ…。」 俯く私に九条君は言葉を続けた。