「紗智。もっとゆっくり歩けよ…。速すぎ。」 昇降口に向かってズンズンと足早に歩いていく私の後ろで、九条君が不満そうに声を漏らす。 でも、私はその言葉を一切無視してスピードを落とすことなく歩いていた。 だいたい、悠長に歩いてたら家に着くまで時間が掛かっちゃうじゃない…。 早く帰って今日の分の勉強をしたいのよ…私は。 若干、イライラしながら校舎を出ると… 辺りはすっかり暗くなり、空には、ぽっかりと三日月が浮かんでいた。