「ごめんね、朔矢君…。私、日誌を書いてから行くね…。」


「俺、書き終わるまで待ってるよ?」


優しい笑みを浮かべながら、私の前の席に座ろうとした朔矢君を慌てて止めた。


「いっ…いいよいいよ!学級日誌を書く時間まで付き合ってもらうのは申し訳ないし…。朔矢君は先に行ってて?私、さっさと書いて、すぐに図書室に行くから…。」


アタフタしながら言うと、朔矢君は背を屈めて私の視線に合わせた。



「じゃあ…図書室で待ってるから、早く来てね?」


周りには聞こえないくらい小さく、透明な声で囁く。

私がコクコク頷くと、朔矢君は“あとでね。”と笑顔で私に手を振った後、ゆっくりと教室を出て行った。