私はこの時、初めて彼のあきらかに悲しい表情を見た。
いつもは感情を顔に出さないだけに、彼も苦しいんだと少し自惚れてしまった。
でも…
「駄目か?…」
「……うん。」
私は、頷いてしまった。
彼のこんなにも悲しい顔を見ると、
胸が痛くて、
私のせいだと思うとつらかった。
「ありがとう…君のことはちゃんと愛してたよ。」
「私も…愛してる。」
「過去形にしなきゃ駄目だよ、悠里。」
「明人さん…」
「太田先生…だろ?」
彼は、私の頭を撫でてからベンチを立った。
そして私も、ベンチを立ち唇にキスをした。
「えっ…」
「これで許してあげる!!」
そう言って私は公園を走って出た。
もう、涙をこらえることが出来なかった。
走ってるせいでヒールを履いてる私の足はちょっと痛い。
でも、こんな痛みより胸の痛みの方が痛かった。
「愛してる…悠里…」
なんて声も、私には聞こえなかった。
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