単純かも知れないけど、彼のその一言が凄い嬉しかった。





家庭教師って、生徒に頼られたり、教えている範囲の問題に理解を示してもらえたり、実際に成績が上がったって聞いた時に凄いやりがいを感じたりするんだよね。





成績が上がるとか、志望校に合格するっていうのは、目に見えて分かる結果だもんね。





それに受け持つ生徒1人、1人の成績が上がればそれはそれで凄い嬉しいことだし…。





だから私が担当している生徒には、力付くでも成績を上げさせてやりたいとも思うし、それが評価されれば凄く嬉しくもなる。





だから涼平くんにも頑張ってもらいたい。





涼平くん頑張れ――…





そんな素直な言葉さえ浮かんでくるんだ。




……―――


…ブゥゥゥ―――――…

…ブゥゥゥ―――――…

…ブゥゥゥ―――――…


―――……





真剣に問題を作っている時に、涼平くんの勉強机の上に置いてる通学用のスポーツバックの中から鈍いバイブーの振動音が聞こえてくる――…





涼平くんは自分の携帯が動いたことに、気づいていたのか、自分の左腕に付けている【G-SHOCK】のデジタル腕時計に目をやると何もなかったかのようにして、自分のノートと睨めっこをしていた。





誰からなんだろう?
急ぎの用事とかじゃないのかな?





「涼平くん。
急ぎとかなら、携帯見ても大丈夫だよ。」





「えっ?あぁ…うん。
…大丈夫。
だいたい誰から着たか検討ついてるから。」




曇らせた表情のまま、そう応える涼平くんは、進めていた手を止めて急に立ち上がった。





「えっ?
どうしたの?」





私は驚いて涼平くんの方を見ると、そう聞いていた。





涼平くんは溜め息を吐いた後、苦笑でさっきまでの表情を誤魔化してしまっていた。