7月――…
高校生は、期末試験に差し掛かり大忙しの月。
そんな時期が来れば私は、バイトで忙しくなる。
「この問題が解けたら、確認の為、小テストやろっか!」
「えぇ~!
マジで…まだやんの?」
目の前の男は、ふんぞり返って気怠そうに駄々をこね始めた。
「当たり前じゃん。
明日、数学試験なんでしょ?
この小テストの問題やってOKだったら今日は終わり。
この問題できれば、理解出来てると思うし、後はテストで小さな計算ミスさえなくせば前回よりはもっと良い点とれると思うから頑張れ!!」
「へぇ~へぇ~…!」
厭々でも、ノートにペンを走らせて計算問題を進めていく。
眉間には縦皺がいくつもある。
私と1つしか変わらない高校生の男の子を捕まえてこんなことを言うのは不謹慎なんだけど、何だかその表情一つ一つが物凄く可愛く思えてくる。
「じゃあ、後は分からない所があれば何でも聞いて。
あっ!涼平くんって、確か理科が苦手って言ってたよね?」
「えっ?
あぁ、うん。苦手。
特に次の範囲のあたりとか…。」
「えぇ~…!
毎回、涼平くんそんなこと言ってない?」
彼のその言葉に笑みが浮かんでくる。
「先生、ヒドッ!」
「…フフッ…ゴメン。
でも…そっか。
理科の試験って、確か明後日だったよね?」
「うん。
明日は徹夜になりそうだな…。」
「ん~…明後日なら、次の時までに間に合わないんだよね…。
しょうがない…。
今から明後日の理科の試験対策問題作っておいてあげるから…!
涼平くんはそっちの明日の勉強対策問題頑張って!」
「マジでかよ!?
先生の対策問題って、良く当たんだよなぁ~…!
サンキュー!」
ニヤリと笑う涼平くんを見て私もつられて笑ってしまう。