「何?」
遥ちゃんの目の前まで進むと遥ちゃんは私に冷たい視線で一瞥する
私より背の高い遥ちゃんは軽々と身を屈めて耳に内緒話しをするようにして手を添えてくる
「あのね・・・」
可愛いく柔らかいキレイな声が耳元の直ぐそばで囁かれている
早まる鼓動を押さえ彼女の声に耳を傾ける
瞳を閉じて“大丈夫だよ”って、何度も呪文のようにして繰り返す
「春兄の仲取り持ってあげるから・・・」
計り知れない不安と恐怖が交差して身が震え上がりそうになる
「涼平との仲を取り持ってよ!」
彼女が出したもの・・・
それは――…
「えっ?!」
振り向く先にいる彼女と目があった
さっきとは違い柔らかく優しい眼差し――…
「交換条件・・・」
息を呑んだ
瞬きすると柔らかく笑う彼女からは信じられない言葉が飛んできていた
私の心の中がザワザワと騒ぎ出す
どうして私は素直になれずにいるのだろう?
「良い交換条件でしょ?」
春馬さんが2人いれば良いのに・・・とか、莉子の好きな人が春馬さんじゃなかったら良かったのにとか
そんな自分勝手な詰まらないことばかり思い浮かぶのにどうしても素直に好きな人に『好きだよ』なんて言うことが出来ない
言うことが出来ない?
ううん・・・言うことが出来ないんじゃなくて、言っちゃいけないんだ
莉子との関係を保つためにも・・・この想いは忘れなくちゃいけない
莉子・・・やっと気づいたよ!
でも親友の莉子にもこの想いだけは言えない――…
言っちゃいけないんだ・・・好きな人も言えず隠し事しちゃって本当にゴメンね。
「答えは今すぐじゃなくて良いから・・・」
その言葉に閉じていた瞼を開けた
今度は揺るがない強い瞳を彼女に向けて答える
私の意志を・・・
