赤い糸




そんな私たちの前に流れる沈黙。





沈黙を破ったのは今流行りの人気急上昇中のポップ・ロック・バンド…Randomの曲『You』が流れたから――…






誰かの携帯の着信音だってことに気づいたのは、春馬さんが動く気配を感じたから――…





「ゴメン…」





そう言うと申し訳なさそうにして、扉を引き家の中に入ろうとした。






その時、微かに春馬さんから「莉子?」って声が聞こえてきた気がした。





不安で俯いてた目から涙が零れそうになる。





左右に揺れる瞳からは、視点が定まらずにいる。





そんな私に気づいた涼平くんは私の手をソッと取るとキュッて握ってくれていた。





えっ?






驚いて顔を上げると涙で滲んだ瞳からは――…






心配そうに顔を覗いてくる涼平くんの姿が…。





だけどその姿はどこか辛そうに顔を歪めているようにも見えた。






そんな私たちを見ていた遥ちゃんは苦しそうに顔を歪めた。





「ゴメンなさい。」





そう聞こえて来た方を見ると、彼女は目を伏せて今にも泣き出しそうな顔をした。





「どうした?」





涼平くんが彼女に目を向けるとそう聞いていた。





「あたしあの人キライ…」







遥ちゃんはソッと瞳を閉じると、そう呟いていた。





「えっ?遥ちゃん?」





そんな驚きの声なんて彼女には聞こえていなかった。





ただ目を伏せて俯いてばかりの彼女に違和感を覚える。