鞄の中から携帯を取り出すと赤外線通信画面を表示する。





「じゃあ、先に私が受信しますね。」





向かい合わせにお互いのプロフィールを交換する。





「OK!届いたよ…。
ありがとう♪

じゃあ、いつでも連絡入れておいで!」





そんなことを笑顔で話すあなたを見てホントに何でも送っても良いの?





なんてことを考えてしまう私は、重症なのだろうか?





気づくと駅のホームに2人は並んでいた。





「あっ、莉子から聞いた?」





“莉子"






呼び捨てで呼ぶ、その名前に胸は“ズキン"って、飛び跳ねた。





私のことは3ヶ月経った今でも『雪ちゃん』なのに彼女のことは『莉子』なんだね。




まぁ、友達の妹なら自然とその距離も縮まるのかな?





「俺らのサークルの話し聞いた?
白浜に夏合宿行くんだけど良かったら一緒にどう?」





「えっ?」





「莉子から聞いてない?
釣った魚をバーベキューするんだって!」





「あぁ…でも私、バイトあるから行けるかどうか…。」





「あっ!
じゃあさぁ~…こんなのは、どう?
その受験生たちも連れて行くって…。」





「へっ?
でもそんなことして…」





「大丈夫だよ!
来年、ウチの大学入る予定ってことにしたら…。
去年、莉子も来てたし…。」





心臓に何か針で刺されたみたいに“チクチク"した。





「でも…何か悪いし…それに涼平くん、部活で夏休み忙しいと思うし…。」





そうやって、素直にあの子があなたに告白する場面なんて見たくないなんて言えなくて…。





ドンドン嘘が広がっていくような気がして怖くなった。





あなたのことがこんなにも好きなのにそれさえも隠してしまおう…好きじゃないって思うことにしようなんて考える私は何て心の狭い人間なんだろうとさえ感じてしまう。