信号待ちで、止まるあなたに一歩一歩と近づく。
夏の暑いアスファルトの上――…
蜃気楼のように遥か遠くにいたと思ってたあなたに少しずつ近づいている。
後ろ姿であなただと分かる私は、きっとあなたに恋をしていると言っても過言ではないと思う。
あなたとの距離がまた一歩縮まっていく。
こんな風に心の距離も近づけたら良いのに………。
今、あなたが振り返ってくれたら、きっと泣いてしまうかも――…
…なんて………ね。
そんなことあるわけないか………。
えっ?
何で――…
「雪ちゃん?」
……ウソ
あなたが振り返ってくれるなんて思ってもみなくて、目に涙が溢れてくる。
気づけば涙は零れ落ちて、目の前の彼はオロオロと困った顔をしている。
「雪ちゃん…どうしたの?
ってか、大丈夫?」
そう言うと、春馬さんはポケットからハンカチ取り出し、私の目にそれをソッと当てて涙を拭ってくれた。
「ゴメンなさない!
ちょっと目にゴミが入ってしまって…。」
差し出された手が嬉しくてまた泣きそうになる。
そして拭かれた後に気づいてしまった。
「コンタクト?
大丈夫?」
「えっ?
あぁ、はい。
もう大丈夫です。
ハンカチ…洗ってからまた返しますね。」
そう言って春馬さんが持っていたハンカチを受け取る。
「あっ!
良いよ…それくらい。
そのままでも俺平気だし。」
「いやいや…そんな…汚いし。
って、あっ!
私もハンカチあったんだ!
今日はソレ使ってください!」
ガサゴソと鞄の中を探し、いつもハンカチやティッシュを入れているシルバーピンクのポーチを取り出し、その中から水色のハンドタオルを手渡す。
「良かったら、コレ使ってください!」
