塞がれた唇は、触れてから直ぐに離された。
一瞬、何が起こったのか分からなかった私は無表情で茫然としていた。
唇からはまだ生温かい感触が残り、涼平くんとキスをしてしまったことを無情にも後悔してしまった。
「…何で?」
震える声でそう呟くと真っ直ぐに見る目に私の瞳は捕らえられた。
揺らぐ目からは涙がまた零れ始める。
私のファーストキス――…
ポロポロ零れる涙を見て涼平くんの目もまた揺らぎ始める。
自分のしてしまったことの罪の大きさに気づいたかのように――…
離れた隙を見て車を飛び出した。
それから何回も携帯に涼平くんからメールや電話が着たけど、見ることも出る勇気もなかった。
何を言われるのかは分かってた。
『あの時のことはなかったことに――…』
きっとそう言われるに違いない。
好きとか嫌いとかそんな感情は全くないけど、無情なキスなんてしたくなかった。
もう恋なんてしたいとも思わない。
だけどやっぱり、キスをされて分かったことがある。
それはあの人のこと――…
忘れたくても忘れられないあの人のことを―――……
