車は家の前に到着し、ゆっくり停車する。





涙を拭いながら笑顔を彼に向けた。





シートベルトを外し、扉に手をかけお礼を言う。





「送ってくれてありがとう!

――…」





“じゃあ、テスト頑張って!"






そう言おうとした私は彼の手に引き寄せられ再び助手席に舞い戻ってきた。





「雪?
何で?
俺があんな話ししたから?」





「えっ?
って…そうじゃないよ!」





「じゃあ、何で?」





彼には隠しきれない気がした。





だからと言って人に言える感情じゃない…そう思うから精一杯の嘘で、そこを隠し通すことしか出来なかった。





「何で…なんだろうね?」





遠慮がちに笑う私の腕を握る手が強くなった気がする。





でも痛くはなかった。





「もう、自分を責めないで!
先生や先生の旦那さん、元カノさんを傷つけても何もならないって気が付いたから私に話してくれる気になったんでしょ?

だったらもっと自分を大切にしてあげて…ねっ?

それに女の子をもっと大切にしなきゃ…ダメだよ。」






「………」





「だったら…」






その時、私は油断していた。





彼に強く引かれた手は私の予想していない方向へと向かう。





「えっ…?」





そう思った時にはもう遅く、柔らかく生温かい感触が私の唇に触れていた――…