私の横には顔をしかめて辛そうな顔をする彼の姿が目に映った。





「知ってるんだろ?
俺の女関係!
前の家庭教師にスゲー言われた。
俺のことが噂になっているって。」





「えっ?」





その言葉に驚いた。





いくら何でも、言わないでしょ?





普通なら――…





その地点で“はっ"と気づいてしまった。





“普通"なら言わない関係も“普通"じゃない関係だったら…?





例えば“色恋沙汰"とか本当に“気の知れた仲"だとか…。





「まぁ、それ全部本当だから…。」





そう呟く彼はどこか淋しそうで、彼は彼なりに『本当の恋を探そうとして頑張ろうとしてるのかな?』なんてことを考えてしまう。





「………」





黙ったままの私に彼は言葉を続けた。





「昔、好きになったヤツがいたんだ。
そいつと出会って初めて人を好きになる楽しさを覚えた。
相手もさ…俺のこと『好きだ』って言ってくれて。スゲー幸せだった。
コイツだけいればそれで良いって、中学2年のガキながらそんなことも思ってた。」



赤信号で止まった車が青に変わるとゆっくり前に進み出す。





「だけど、そいつには俺の他にも男がいたんだ…裏切られたんだよ。

そいつの男を見て驚いた。
心臓が止まるかと思った。
ふざけんなって本気で思った。」





震える彼に『大丈夫?』とかそんな簡単な言葉を掛けちゃいけないって、なぜかそう思ってしまった。





だから黙ったまま彼に目を向ける。