赤い糸




彼の家を出ると、いつの間にか家の前にはシルバーのセダン車が止まっていることに気づいた。





車が止まっているのに疑問を感じて助手席側の窓から中を覗き見ると、窓が開いた――…





へっ?
ってか何で?






そんな疑問が頭の中を過ぎる。





「早く乗って!
送ってくから。」





中の不機嫌な男に目を丸くしていると、その男からそんな言葉が吐かれてしまった。




「免許は、この間取れたから…。」





そう呟きながら、私に差し出すカードを見て、その疑問が晴れた。





そう言えば…なんて思い返してみると思い当たる節はいくつでもあった。





ここ最近、部活の後バタバタと忙しそうにしてたワケや、勉強以外に熱心に考え事をしてたワケ。





それはきっと教習所に通ってたからなんだと今更ながらに気づいてしまう――…





その疑問が晴れた所で“ガチャ"っと扉を開けて、彼の運転する車の助手席に腰を掛ける。





扉を閉めてシートベルトをすると、ゆっくりと車のスピードが上がって行った。






「雪驚いた?」





さっきまで不機嫌な顔をしてた男は一瞬にして笑顔に変わる。




「まぁ…。」





本当は、物凄く驚いているけど、そんなこと素直に言えない。