それだけ言うと黙って扉を開けて先に下に降りて行った。
何だかまた不機嫌にさせてしまった感じがした。
そのまま出来たばかりの理科の試験対策の問題集と予想問題とその解答を分かりやすいテーブルの上に纏めて置いておく。
鞄の中に、筆箱を直し部屋を後にした。
階段を降りて行くと、リビングから涼平くんとその後ろからお母さんが出てきた。
「雪先生、今日もご飯食べられないんですってね…。」
「残念だわ…。」何て話すお母さんに何だか申し訳ない気持ちになる…。
きっと今までの涼平くんの家庭教師をしてた人たちは、断りきれなかったのか一緒に食べて帰ったりしてたのだろうと感づいてしまう。
「ゴメンなさい。
家(ウチ)、そう言うのが厳しくて、ご飯食べて帰る時は早いめに連絡入れなきゃいけないんです…いつも本当にすみません。」
そんな嘘に溜め息が零れ落ちそうになるのを必死で食い止める。
「そんな…良いのよ。気にしないでね…。
お母さまがせっかく作ってくれた料理を無駄にしたら申し訳ないしね。」
優しい笑顔でニッコリと微笑んでいた。
涼平くんの笑顔がステキな所はきっとお母さん譲りなんだと思う。
優しい涼平くんのお母さんの笑顔を見てそう強く感じた。
「俺、先生送ってくから…ちょっと家出るわ。」
「気を付けて行きなさいよ!」
「おう!
じゃあ、行ってきます。」
私を追い抜いて先に靴を履くと涼平くんは家から出て行った。
「今度は、ゆっくり食べて帰ってよね?」
…なんてことを少し淋しそうな顔をして呟くから、出来もしないのに「はい」なんて嘘を応えてしまう。
そんな自分に嫌気がさして吐き気さえする。
苦笑いを浮かべながら開ける扉が重く感じたのは、きっと嘘を吐いてしまったからなんだと感じた。
