赤い糸




結果に愕然としてしまった。






「全問正解!」






これだけできれば私なんて何の役にも立っていない気さえする。





「これで、明日の数学は大丈夫だね。
今日はちょっと早いけど終わろっか。」





そう良いながら帰る準備を始める。





「送ってく…。」





彼が突然、立ち上がってそう呟いた。





「えっ!
ってか、大丈夫だよ!
涼平くん明日、試験でしょ?
勉強しててよ。」





「何だったらご飯食ってけよ!」





そうは言われても会社からはそんなことして良いなんて言われてもいない。





むしろ私がバイトしてる先の家庭教師の派遣会社は、生徒と一定の距離以上近づくことを堅く禁じられていて、本当は生徒宅での飲食は禁止されている。





さすがに飲み物は飲まないのはマズイってことで、飲むくらいは許されているけど、食べる行為は、勉強とは関係ないってことで相変わらずのタブー領域だ。





皆、結構、影で食べてたり、生徒と遊びに行ったりもしてるみたいだけど、どうなんだろう?




まぁ、それも先輩やベテラン家庭教師の先生にバレたら解雇問題に発展するらしいけど…。





バイトで“解雇"とか有り得ないよね?





深い溜め息を吐きながら、私の返事を待つ彼に目を向け「ゴメンね。家でもう用意してくれてるから…。」なんて言葉でその誘いをやんわりと断る。




気のせいか不機嫌な表情に“ぷぅ"っと、ほっぺが膨らんでしまったようにも感じる。





首を思わず傾げた私に目もくれず先に部屋を出ようと扉に手をかけた涼平くんの後ろ姿を見送る。





そんな私を気にも止めない彼は当たり前のようにして口を開く。





「送って行くから…。
用意出来たら下に来て。」