「つぅーか、何でお前がそんな時化た面してんだよ。
お前には関係ねぇーし。」
「さっきから『お前』『お前』って何よ!」
ムッとして涼平くんを見ると、言葉とは裏腹にちょっと切なそうな悲しい顔をしていた。
今にも泣き出しそうな顔に目が釘付けになる。
少しずつ彼の方に歩み寄り、背の高い彼の頬に手をソッと優しく触れてみる。
「泣きたければ泣いて良いんだよ。」
きっとあの言葉は、100%が涼平くんの言葉じゃないからこんな顔をするんだ。
自分がしてしまった愚かな罪を分かっているから…彼女の幸せを感じ取っているから、あんな言い方になるんだって思った――…
そう思ったら、私の目からは大粒の涙が零れ落ちていた。
気付いてあげられなくて、ゴメンね…助けてあげられなくて、ゴメン…。
色んな感情が溢れてくる――…
「はっ?
えっ?
……って、何で雪が泣くんだよ…?」
「ってか、何で呼び捨てなのよぉ~!」
「『お前』はダメなんだろ?」
そう言うと彼は、優しく笑いかけてきた。
「『お前』は嫌。」
涼平くんは手を伸ばし、私の目から流れる涙を指で拭う。
「じゃあ、良いじゃん。
雪で…。」
「呼び捨ては嫌。
さっきまで『先生』って読んでたのに…。」
そう言うと“フッ"って鼻で笑った。
