携帯のバイブー音に溜め息を零しながら、涼平くんの鞄に目を向ける。
涼平くんはまだ下で飲み物の準備をしているようで上に上がってくる気配はないようだ。
どうしよう?
携帯が鳴ってたこと言った方が良いよね?
取り敢えず、明後日の問題作成作らなきゃ。
もう時間もないし……。
今日の授業の時間は、17~19時で後、1時間弱で終わっちゃう。
この問題事態はもうちょっとで出来そうだけど……。
プラスで予想問題に記し付けている時に部屋がノックされ扉が開いた――…
「遅くなって、ゴメン。
はい、冷たいお茶!」
そう言いながら、カップを渡してくれた。
「ありがとう。」
一口啜ると麦茶の味がした。
涼平くんは、暑いのに、ホットコーヒーを入れてきたようで涼平くんのカップからは湯気とコーヒーの芳ばしい匂いが部屋中を、包み込んでいた。
涼平くんがさっきまで座っていた席に、着いた所で『携帯』のことを思い出してしまった。
さっき部屋を出るまでの曇った表情が気になって、言おうか言わないでおくべきなのか悩んだけど、“家庭教師"の私が深入りするべきことではないことに気付いた。
さり気なく軽く、伝えれば大丈夫だよね?
「…ねぇ、涼平くん。
さっきまた携帯鳴ってたよ。」
それだけ伝えると、また溜め息を吐いて苦笑いをされてしまい、言ったことを後悔してしまった。
「そっか…。
サンキュー!」
それは感情のない“サンキュー"。
感謝されていないことに言わなかった方が良かったんだということに気が付いてしまった。
