ぽろぽろと落ちる涙で、
紙はぐしゃぐしゃになってしまった


ずるいよ、こんな手紙


こんなの書かれたら、
泣くに決まってるじゃん


泣かないようにしようって
決めてたのに、ずるいよ......


止めようとしても、
涙はどんどん溢れ出してきて
私の顔や服をぬらした

手紙をギュッと握りしめて
唇をつよくかむ



「私も、お母さんとお父さんが
 大好きだよ。
 私ね、今、とってもとっても幸せなの!
 だからね、心配しないで」


ぐしゃぐしゃの顔で
それでも心から笑顔になって言った


その声に答えるかのように
木が少しゆれた

それと同時に、1つ花びらが落ちてきて
ぬれた私の頬にぴったりくっついた


ただ、木にひっかかってた花びらが
今ので落ちただけかもしれない


でも、私にはこの季節外れな花びらが
お母さん達からの贈り物のような気がした


「ありがとう」


私を産んでくれて、ありがとう
私を育ててくれて、ありがとう
こんなにも私を愛してくれて
ありがとう


「ありがとう」


もう一度、そう呟いて
頬についた小さな花びらを
手の上に乗せた

少しでも力を加えてしまえば
すぐに破れてしまいそうな花びら

でも、一生懸命いきてる


こんな花びらでも、生きてる


軽く花びらを握って
制服の内ポケットから生徒手帳を出した

そこに花びらを入れる


帰ったら、押し花にしよう

多分この桜は、私の一番の宝物になる