「はい、聞いてません」
「ははは。
楠木さんらしいですね」
なんか、さっきから楠木さん楠木さん
ってややこしい............
「がんです。
それも、診察して分かったときには
何箇所かに転移していて手遅れでした」
「がん!?
しかも、もう手遅れ..........」
お母さんの死因が
私のせいではないことを知って、
すこしほっとした
でも、がんだなんて.............
そんなそぶり、全くなかった
やつれてるなとは思ったけど、
いつも『仕事が大変だ』
って笑って言ってたから
あぁ、そうなんだっておもってた
まさか、がんだったなんて...........
「ほんとは、ここに入院して
少しでも長く生きれるように治療に
専念していただきたかったのですが…
どうせ死ぬなら少しでも働くと
聞かなくてね、困りましたよ。」
借金、返すために自分の体犠牲にして.....
ほんと、お母さんは馬鹿だよ
「あ、そうそう!」
急に先生はそういって席を立った
どうしたんだろ?
机の中をガサガサとあさって
何かを探してるみたいだった
「あ、あったあった。」
そういって先生が持ってきたのは
古びた手紙だった
「これ、楠木さんに娘が来たら渡すように
って言われてたんですよ。
楠木さんは、口を開いたと思えば
いつも菜乃香ちゃんの話で、
最後まで、死ぬ直前まで
菜乃香ちゃんのこと言ってました。
いい、お母さんを持ちましたね」
先生はにっこり笑うと、
私に手紙を渡した

