女の手からは血が吹き出し紅く染まっている。

その場にいるだれもが目を見張った。

「姫・・・っっ!?」

ただ一匹。
氷雨だけは苦痛に満ちたまなざしを女とそして疾風にそそいだ。

女は手を庇いながら配下の妖怪達に命じた。

「この子に手を出してはならない。いったん引く。」

女が氷雨に目を向けると、漆黒の狼は女を背に乗せた。

女が手をかざすとつむじ風が巻き上がり、視界を覆った。

つむじ風がおさまった後には何ものこっておらず妖怪達も姿を消していた。

「いない・・・」

疾風はぽつりと呟いた。
あの女は自分を庇った。
なぜ?


「どうゆうことだ・・・?」
竜も低くうなった。

最後にちらりと疾風に向けられたまなざし・・・慈愛と悲しみに満ちていた・・・。