奥には、疾風が今か今かと待ち構えていた。

自分の前に立った彼女を見たとき、恥ずかしさで、頬を赤らめている愛らしさに胸が高鳴った。


「ここにあるは、我が息子、妖士族次代統領の妃、初子姫だ。これより、戴冠式を行う。」

朗々とした、深みのある政行の声が響く。

「初子姫。」

「・・・はい。」

蚊の鳴くようなか細い声。
「そなたにこれより、新たな名を授ける。これより、
麗貴妃(れいきひ)と名乗るがいい。」

麗貴妃・・・

「はい。」

「麗貴妃・・・」

横で疾風が呟いた。
そちらに顔を向けると、
疾風が、微笑んでいた。