「では失礼致します。」

御簾をくぐり抜けて陽妃様の前に手を付いた。

「宮様!!!!」

女房たちの悲鳴に陽妃は微笑み言った。

「あなたたち、少し下がっていて。」

「陽妃様!!!!!!!!」

女房たちは首をふりふり下がっていった。

「さぁこれでゆっくりお話出来ますね。」

陽妃の言葉に顔を上げると・・・

そこには見たこともないような美しい女性がいた。

優雅で、たおやかで、厳粛な美にあふれた女性。

思わず見とれてしまった。
「初子様?いかがなさいました?」

「あ、いえ。・・・様などつける必要はありません・・・陽妃様・・・」

しかし陽妃は不満そうに言った。

「ではあなたも私を義母と呼んで下さいな。そんな他人行儀にされると寂しいですわ。」

そんな恐れ多い・・・!!
口を開こうとすると陽妃は初姫をまじまじと見つめた。

「な・・・何ですか?」

「いいえ」
にっこりして一人で頷いている。
「あなたは噂どうりの美姫ね」

噂・・・?

「噂とは?」

「あら、知りません?
妖士族の宮・初姫は天女のごとき美貌をもつって都の殿方はみなあなたを娶りたいと苦心していたそうよ。」

知らなかった。
だいたい自分などというたいして美人でもない女だなんて誰が娶りたいなんて・・・

「疾風も昨日来たのよ。もう、この世の人かと疑いたくなるほど美しいってあなたのことばかり・・・しかもあなたたちまだ夫婦の契りを結んでないっていうじゃない!愛されてるのね!」

はぁ・・・
こんな明るい女性だったなんて・・・
人は見かけによらないものね・・・

・・・え?愛されてる?

「そんなはずはありません・・・疾風様はただ私が面倒なだけでは・・・」

「何を言ってるの!葵の上のときは初夜に結ばれたのよ!それをしないのはあなたを大事に思っているからよ!」