「斎宮様はもうじきいらっしゃいます。」


大きな部屋に一人きり。

不安に駆られた初姫は辺りをきょろきょろと見回しはじめた。


「まぁ!相変わらずですわね。初子様!」

いつの間にか御簾の向こうには葵の上が立っていた。
「葵の上様・・・」

「ちょっとそこのあなた!御簾を上げて。」

傍らにいた女房に命じると下がらせた。

「まさか、わたくしの後に宮になるのがあなただったなんて。」

御簾が上がり、艶やかな着物をまとった化粧の濃い女性が現れた。

「お久しぶりでございます葵の上様。」

手を付いて頭を下げる。

「まぁ!図々しい!わたくしの座を奪っておきながらそんな挨拶をするなんて!」

やっぱり・・・
葵の上はそう思ってらしたのね・・・


「・・・今日は・・・神殿に捧げるためのお祈りを・・・。」


「そうだったわね。簡単よ、毎朝ご聖水をお供えして、毎日一時間、お祈りをするだけ、」

「お祈りは・・・」

「自分で考えるのよ。さぁ用がすんだなら帰って!」

「葵の上様・・・?」

葵の上は唇をきりりと噛み締めた。

「あなたは変わらないわ!わたくしはあなたが大嫌い!いつもか弱い女のふりをしてばかり!疾風様はわたくしの夫になるはずだったわ!」