「姫様。お忘れ物は?」


「無いわ。ありがとう」


美しく着飾った初姫に織り姫が声をかけた。


これから帝の御殿に暮らしている斎宮、葵の上に会いに行くのだ。

「お車をご用意しております。こちらへ。」


牛車に乗り込むと、織り姫が簾を上げて、外が見えるようにしてくれた。


初姫の心は落ち着かないままだった。

一体どんな顔をしてお会いすればいいのかしら・・・

年の離れた従姉姫に対する恐怖心から彼女は俯いて、着いたことにも気付かなかった。