「氷雨(ひさめ)・・・」

その小さな声は雨音に紛れて消えていく。

けれどそのときその声に応える低い唸り声がした。

「姫よ・・・。我はここに。」

暗闇から姿を現したのは、通常の倍はあろうかと思われる漆黒の狼。