「敵襲だぁぁぁぁ!!神狐族の敵襲だぁぁぁぁ!!」

夜の帳が降りた頃。
妖士族は総力をもって都の警護をしていた。

不意に南側の陣が騒がしくなった。
本陣で休息をとっていた政行と疾風はその知らせを聞いたとたん立ち上がった。
「応援を向かわせる!疾風・・・行けるな?」

厳しい顔で息子を見た政行は疾風が力強く頷いたのを見て微かに笑った。

「竜!!いくぞ!」

白銀の狼とともに本陣を飛び出していった疾風の後ろから疾風直属の部隊が追い掛ける。

「・・・凍。お前も行ってくれ。」

長身の青年が身を翻したのを見て、政行の傍らにいた幸が口を尖らせた。

「あたしは?」

「お前はまだだ。本陣が落とされては意味がない。」

苦笑気味に言った政行を不満げに見上げた幸ははぁいと肩を竦めた。

「南側か・・・」

南側は御所から最も遠い場所だ。

これは誘導しているのではないかと政行は考えた。

そこで統領たる自分は動かず、息子・疾風を向かわせた。

「恐らく、敵方の総大将は南にはおるまい・・・南側に注意を向けておいて御所を攻撃するつもりだろう。」
政行の言葉に幸は納得したように頷いた。

「でも、待機ってあたしの性に合わないのよね。」

暇すぎたのか、氷柱をもてあそびはじめた幸を横目でちらりと確認した政行はやれやれと首を振った。

しかし、すぐに薄く笑みを浮かべて幸を見た。

「退屈な時間は終わったぞ。敵方のお出ましだ・・・」

氷柱そっちのけで瞳を輝かせた幸は闇に包まれた空を嬉々として見上げた。

空を埋め尽くすほどの妖怪達が本陣の築かれている御所目指して飛び込んできた・・・・・・