同じバンドのファンと分かったあの日から、彩花さんは俺と顔を合わす度に笑顔で話しかけてきた。


その内、兄貴が家にいなかったり、先に家に来て兄貴の帰りを待っている時などは俺の部屋に来てバンドの話をしたりCDを聞いたりするようになっていった。



彩花さんにとって俺は彼氏の弟であり、同じファン同士でしかない。



一方で俺は彩花さんと会う度、話す度、彼女を知る度に想いは募っていった…。



彩花さんは兄貴の恋人…


何度も何度も気持ちを押し殺しては彼女を好きだという焦がれる感情の渦の中でもがいては抜け出せずにいた。