「ぐずっ…弘樹…もう行きなよ、私は大丈夫だから…」


しばらく泣きはらしたサエは俺を突き放しながらそう言った。


「でも…」


こんな常態のサエを1人にしていいのか正直迷う。



「弘樹は優しいよね…私そんな弘樹が大好きだったよ。けどもう大丈夫だから、これ以上優しくされたら立ち直れない…だからもう行って」



「…分かった」


俺が優しくする事でサエを辛くさせてしまうならと思い、俺は頷くしか出来なかった。


自分の荷物を持ちサエからゆっくり離れて部屋の出口へと歩く。



「弘樹!ちゃんと自分の気持ち伝えなきゃ駄目だよ!幸せになんなきゃ許さないんだからねっ!」


ドアノブに手を掛けた俺の背中に叫ぶサエ。



「サンキュ!俺付き合ってた時サエの事ちゃんと好きだったよ。お前も幸せになっ!」



笑顔で振り返った俺に、サエは今までで一番可愛い笑顔で笑った。