「だよねぇ!キレイすぎるよ!この声はまさに神だね♪」


彼女は目を輝かせて俺の言葉に反応する。



違うよ。


確かに歌声もいいけど


俺が今キレイだって言ったのは


あなたの事なんだよ…。



「俺も後でCD買ってこよっかな」


「そうしなよ♪ファンなら絶体買うべきだよ〜」



今日も彼女は俺の気持ちになんて、これっぽっちも気付かない。



いや、気付かない方がいい。


俺の気持ちは彼女を困らせてしまうだけだろうから…



だけど、何処かで本当は気付いて欲しいなんて思ってる。


そんな矛盾だらけの恋心から俺は今日もまた目をそらす。



彼女は兄貴の恋人だから…─