ちょうど横棒二本の間が潰れ、黒い四角の上に小さな四角があるように見える。こうなってしまうと勘に頼るしかない。
「田かな?」
「自由の由だと思います。」
「なるほど。ふたりともハズレだ。今書いたのは土だ。」
「土?本当ですか?」
長沢は信じられなかった。しかし、丹沢が嘘をつく理由もない。
「そう、土。土曜日の土を書いたんだよ。」
「そうですか・・・。」
わかってはいたが、改めて自分の目がおかしくなったとわかるとやるせなかった。

「大江さん・・・でしたっけ?」
側で見ていた大江に声をかけた。
「あ、はい。なんでしょう?」
「今、軽く話を聞きましたけどね。」
「はい、どうなんでしょうか?」
「まだ、おそらくとしか言えないが・・・このふたりが見ている景色は、モザイクになっているんだと思います。」
「本当ですか?」
大江の頭では、どうやっても信じられない。例え、医者である丹沢がこう言っても、それは変わらなかった。
「こんな事、嘘を言ってもしょうがないと思うんですが・・・。」
「それはそうですが・・・。」
「早く病院に連れて行った方がいい。ここでは検査すると言っても限界がありますからね。それにふたりとも突然なったようだ。脅かすようで申し訳ないが、感染する類のものかもしれない。だから、きちんと検査することです。原因がわからないのが、一番怖いですからね。」
そう言われると何も言えない。素直に従うだけだった。