「ま、逃げて当然か・・・。」
神宮寺が病院を出てからの間も、モザイクは止まる事無く拡がり続けていたようだ。
理解できない事。これに遭遇した時の恐怖たるや推して知るべしだろう。
「俺は何やっているんだろうな・・・。」
運転手がモザイクとなって運ばれてきた時、神宮寺には自分ならなんとか出来ると言った自負がどこかにあった。今となれば何故そう思ったのか、自身でもわからない。おごりだと言われれば、それを受け入れざる得ないだろう。
ただ、何とかしたかったのだ。この奇っ怪な事象を止めたかったのだ。
「くそっ。」
改札を思い切り殴った。葛藤が止まらなくなった。
「何なんだよ。俺は・・・。」
涙が浮かんできた。感情が循環する。

どれくらいの時間だろう。かなり長い時間だった気がする。その間、神宮寺は自分の葛藤の中に居続けていた。
怒り、泣き、そしてまた怒るの繰り返し。それを何度も繰り返していた。
そのせいだろうか。感情は枯渇し、再び元の神宮寺に戻っていった。