救急車に乗ったはいいが悩んだ。それはこの子供をどうしたらいいのかと言う事だ。見えるなら、いくらでも対処のしようがある。しかし、見えないのだ。さっきの運転手は制服を参考に出来た。しかし、今回は目印になるべき衣服もモザイクだ。
「お母さん、すみません。ここに寝てもらえますか?」
「は、はぁ。」
母親は怪我の自覚はなかった。だから、隊員の言葉を不思議に思い、なんとも間の抜けた返事をした。
横になった救急車のベッドは、なんとも言えない感覚を母親に与える。怪我をしていないのに、怪我をしてしまったような、気持ちを沈ませる感覚だ。
「あの、どうして・・・?」
「申し訳ありません。この子?と一緒に寝ていただければと思いまして・・・。私たちも長年この仕事をやっていますが、こんな病気をはじめて見たんです。だから、念のためこの子?を抱えていただけたらと思いまして・・・。」
淡々と話す隊員の中に、母親は哀しみを覚えた。
<そうよね・・・。こんな奇怪な病気、そうそうあるわけないわよね・・・。>
伏し目がちに我が子を見た。

そして、救急車はゆっくりと走り出した。