アパートの前にはいかにも高そうな車が停めてある。私はドアをあけてもらい、無駄に広い後部座席に座った。


車が動き出す。



「あの…」

「何ですか?」


長尾が助手席から振り返る。


「父は…家に行けば会えるのでしょうか?」


「いえ、会えませんよ。」

「え?」


びっくりしてる私をよそに話が続く


「社長は今、日本にはいません。トラブルが起きましてシンガポールにいらっしゃいます。」


シンガポール?一瞬、耳を疑った。


「ご心配なさらないで下さい。指示は受けておりますので。咲良さんには社長のお姉様、つまり伯母様の家で社長が帰られるまで過ごしていただきます。」