「ふん、上がったら覚えとけよ。隅々までたっぷりと味わってやるからな」

「ご自由に」


精一杯の強がりをするしかなかった。


その行為と裏腹に、内心はビクビクしている。

全身が心臓になった様に激しい鼓動。


今しかない!


慌てて体も拭かずに服を来て、そっと部屋を出た。

エレベーターなんて待つ余裕はない。

非常階段を駆け下りる。

激しく鈍い金属音が鳴り響く。


「うわっ」


踏み外した。

階段は外付けになっていて、雨で濡れ滑り易くなっていた。

足がズキリと痛む。


だけど男が追ってくるかもしれない。

痛みをこらえすぐに立ち上がって逃げた。