その中には体内に注入する為の注射器が転がっていた。

だが見える範囲では彼女の体に注射した跡が無い。

服で隠れる所に打っているのか、それとも爪の間か・・・。

それにしても薬物の数が多い。

これだけ使用しているなら幻覚や妄想に襲われるのも、死ぬのも不思議ではない。

これなら白河愛美は自殺で処分されるだろう。


俺は携帯を取り出して新たなボスの番号を打った。

出たのはやはり和彦だった。

『どうだった?』

「ちゃんと殺した」

『あっそ。だいぶ殺すの楽しくなったんじゃない?』

ニタニタ笑っているのが目に浮かぶ。

『この次も楽しんで。そっれじゃぁ』

電話はブツリと切られた。

和彦の言葉が頭に響く。

“楽しくなったんじゃない?”

確かにそうかもしれない。

俺は人を殺す禁断の楽しさを知ってしまったのかもしれない。

白河愛美の手首を切った時、ナイフを伝って手に微かに血管が切れた感覚。

腹部にナイフを突き立てた時、グチュッと肉と小腸が突き破られた感覚。

右にスライドさせた時の

・・・・・・ブチブチブチ

・・・・・・クチュクチュクチャ

音を立てて切り裂いた感覚。

・・・またやりたい。



俺はナイフを白河愛美の右手に握らせ、716号室を出た。