鈴原真矢は珈琲を2つ、潤の居るリビングに持って来た。

鈴原真矢は潤の正面に腰を下ろした。

「私はこの村生まれのこの村育ち。都会で働くのが夢で何度もこの村を出ようとしました。でも村長がそれを許してくれないんです」

「それは何故ですか?」

「私が都会に出てクドラクの情報が洩れる事を村長は恐れているんだと思います。今時、吸血鬼の言い伝えがある所なんてこの村ぐらいですから」

「この村を出ようとしているのは鈴原さん以外にもいますか?」

「はい。私が知る限り同年代の方は一度、村長に話をしに行っていると思います」

「以前村長が“今も奴が私達を見ている”と言っていたんですが、それはご存知ですか?」

「えぇ、知っています」

「それを知っていて何故僕に教えてくれるんですか?」

「私はクドラクを信じていませんから」

「じゃぁ何故この村を無理にでも出ようとしないんですか?」

「三年前に私と同じ様にクドラクを信じていない人が無理矢理この村を出て行きました。でも翌日、彼は遺体でこの村に戻ってきました。首筋には鋭い牙で噛まれた跡があって、村中クドラクだって騒いでました」

一旦話を切り、鈴原真矢は珈琲を口に含んだ。