夜、初めてチュウの家で夕食を食べる。

チュウが以前『母親は料理が苦手』なんて言ってた言葉の真逆で

食卓に並ぶ料理はどれも美味しかった。

母さんが作る味と違うけど、僕は凄く美味しいと思う。

「アツム君、美味しい??」

一口食べる度に聞かれる言葉

「凄く、美味しいです…」

聞かれる度に僕は答えながら。


僕と、チュウの母親と、チュウと3人で囲む食卓

だけどチュウはずっと喋らない。

ずっと怒った表情でご飯を食べていた。




「そういえば、アツム君たちは今日終業式だったよね。」

母さんと違って自分から話すことをあまりしないチュウの母親はご飯を早々に食べ終えて切り出した。

「はい…」

僕に尋ねて確認し、チュウを見る

「まだ、見てないんだけど。」

「………」

チュウは無言でご飯を食べる

「通知表」

チュウの前に手を差し出す

「…忘れてくれよ。」

唸るように声を絞り出して言うチュウ

「忘れるものか。愛息子の成長記録なんだよ?」

ニヤリと笑いながら、隠し持っていたのか背後から見覚えのある白いモノを取り出した。

「通知表…」

「うわっ!やめろって…!」

チュウは立ち上がり、通知表を奪おうと腕を伸ばす。

「あんたが素直に出さないからよ。」

奪われないように伸ばされた腕をよけ、中を覗く

「…………」

静まるリビング内

「…あたし、勉強みてやろうか?」

「…遠慮します……」

チュウは母親に睨まれる視線に耐えられないのか、目を逸らして丁重に断っていた。